あぁ、乗る荷台を間違えたなぁ
一通り連合軍の国々を巡り終えた私は、帰路についた。
東日本から四国に一番近い本州の県といえば、和歌山か大阪。
どうにかそこまで戻る為、私は気のイイおじさんの荷台に乗せてもらっていた。
いや、助かったね。奈良までとはいえ、多少は楽できそう。
さすがに坂道とかは、後ろから押して手伝ったりした。
そして今私は、かの有名な羅生門の前に立っている。
「…ほぁー、なかなかの絶景」
「はは、お嬢ちゃんは大和に来るのは初めてだったか」
「はい」
「さて、もう一押し手伝ってくれよ」と言われ私もまた荷台を押しに戻った。
そういえば、
「つかぬ事をお聞きしますが」
「なんだい?」
「この荷物は、何処まで運ぶんですか?」
「おや、言ってなかったかね。領主の松永様のとこだよ」
「…松永様?」
初めて、聞いた名前だな。BASARAのキャラじゃないんだろうか。
まあ、モブキャラの一人にいたのかもしれない。
と、その時私は思っていた。
本当は、思いきりBASARAのキャラだったのだけど。
「はい、ご苦労さん」
「ここですか」
おじさんが荷台のもち手を下ろしたのは、城の前。
そりゃ領主様だもんねぇ…なかなかに大きい。
と見上げているうちにも門が開いた。
「まっ、松永様…!」
「え?」
門の先で、待ち構えていたのは白髪交じり、いやメッシュだろうか?
黒髪にところどころ白を散らせた壮年の男がいた。彼が、松永と言う人らしい。
お偉いさんなので、私も隣のおじさんにならって頭を下げた。
おじさんが、松永様が出てくるとは思わなかった旨を丁寧な言葉遣いで伝えれば、
「いやなに、待ちきれなくてね。この茶器が届くのを楽しみにしていたのだよ」
と、渋い声が響く。あれ?この声って、よくテレビで聞いたな…。
ぼんやりとそう考えるうちに、どうやら城の中に運び込むことになったらしい。
「では早速、広間まで運んでもらおうか」
「へい、分かりました」
「あっ、手伝います」
と、荷物を降ろすおじさんに続いて私も箱を持つのだった。
松永と言う人は、始終私達の事をじろじろと見ていた。何なんだこの人。
「では、儂らはこれで失礼いたします」
「ご苦労だったね」
どうも、と二人して立ち去ろうとした時だ。
「だが、そちらの娘には残っていただこうか」
「…え?」
何で?と私もおじさんも困惑の色を見せれば、男は薄い笑みを浮かべながら続ける。
「少し、君には話があってね」
「はぁ」
何だろう、と思いつつ未だにオロオロしているおじさんに言う。
「此処まで乗せていただいて、ありがとうございました」
「あ、あぁ」
頭をぺこりと下げてそう言えば、こちらを気にしながらもおじさんは坂を下りていった。
さて、と。
「私に話とは、何でしょうか」
「まぁそう急かさないでくれ。…まずは城に入ろうか」
「分かりました」
あぁ、おじさんには悪いけど、
あの荷台に同行しなければこの人に目をつけられることもなかったのかな。
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