まるで白鴉のような
「ザビー諦めないからネー!必ずザビー教ヲ広めニまたキマース!」
捨て台詞を残して、ザビーは南蛮へ帰っていった。
もう二度と来んな、その濃い顔は一生分堪能したって…。
今、元親さん・毛利さん・島津さん以下連合軍の皆様は軍議中だ。
私は一応、元親さんの客人とされているらしい。半壊状態の自室で待機中。
半分になった天井からは、お天道様が見える。
眩しーなぁ…。でも、風が気持ちいいからいいや…。
ベッドでごろごろしながら、目を瞑る。
あ、寝るわこれ…うん、昼寝だ昼寝。どうせ、まだ軍議は終わらないし。
・・・
「おい、起きろって!」
肩をゆさゆさ揺さぶられて、目が覚めた。
逆光が眩しい頭上で、銀色の髪がキラキラと光っている。
「元親さん…?」
「おぅ」
やっと目ぇ覚ましたかと笑う元親さんがそこにいた。
あぁ、やっぱり囚われの鬼なんて似合わない。
自由になったこのヒトは“西海の鬼”と謳われるのだろうけど、
こんなに晴れ渡った空の下で笑うこのヒトはまるで―――
「軍議終わったぜ。でよぉ「白鴉みたい」
「…ぁん?」
寝ぼけた頭は、脳内に浮かんだ言葉を考え無しに言葉に変換していく。
「しろいからすって書いて、はくあって読むの。
青い空をどこまでも自由に飛んでいく鳥…時代を導くんだって」
このヒトは、私をザビー教団から解き放ってくれた。
私を導いてくれた。だから―――
「元親さんは“白鴉”みたい」
へらっと笑って言えば、元親さんは照れたような様子で視線を泳がす。
「あー…ほれ、とりあえず起きろ。呼ばれてんだ」
「んー…?」
「あんたも、事情がどうなったか知りたいだろ?」
「んー…んぅ」
そこまで言われちゃ仕方がない、行くとしようか。
私を導いて、白鴉の鬼。
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